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中国電力における低圧引込線樹木接触箇所への低圧防護管挿入業務

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図:樹木近接箇所に取り付けられた低圧防護管の例(黒色の筒状カバーが電線に装着され、枝との接触部分を保護している)

弊社では、中国電力ネットワークからの委託で、低圧防護管挿入業務を行っています。今回は、低圧防護管挿入業務とは何か。どういった背景があるのかということを解説していきます。

1. 背景と目的

電力の安定供給と安全確保の観点から、配電線と樹木の接触は重要な課題です。特に一般家庭など低圧需要家への引込線(100V/200V級)が成長した樹木の枝葉に触れてしまうケースでは、電線の被覆損傷や短絡による停電事故、感電事故のリスクがあります。現行の技術基準では

**「低圧架空電線は通常の風で植物に接触しないよう施設すること」**

とされていますが、実際には樹木の生長や強風・積雪、家屋側引込線腕金の脱落などによって接触が生じることがあります。こうした樹木接触が長時間放置されると、電線被覆の擦過劣化から発火し火災につながる危険も指摘されており、早急な対応が求められます。

この背景を受けて、中国電力ネットワーク株式会社(以下、中国電力)では、低圧引込線が樹木に接触している箇所に**「低圧防護管」**(絶縁保護カバー)を挿入する対策を実施しています。低圧防護管を電線に被覆することで、電線と樹木が直接触れても電線が機械的・電気的に損傷しないよう保護でき、停電や災害の未然防止につながります。この施策の目的は、

①電線設備の損傷防止と信頼性向上、

②感電・火災など公衆災害の防止、

③樹木伐採を最小限に留め環境や景観への影響に配慮すること

といったものです。防護管による保護は、樹木の剪定・伐採が困難な場合や、樹木所有者の意向で伐採を避けたい場合にも有効な代替策となっており、安全と環境保全の両立を図る取り組みです。

実際には引込線は需要家や近隣一般人の敷地内を通っていることが多く、樹木の伐採のために逐一許可を取っていくのはほぼ不可能です。また、施工時に敷地内にある樹木を伐採してほしいと、樹木所有者から要望があっても、防護管挿入業務をしている業者が大きな木を丸ごと伐採することは、業務の範囲外なのでできません。ただ、蔦が絡まっていたり、細かい枝が防護管挿入に際して障害になる場合は最低限伐採します。

2. 実施体制

本業務は、中国電力と地域の電気工事業者団体である電気工事工業組合およびその加盟工事業者との協働体制で実施されています。中国電力は送配電事業者として、本対策の計画立案・対象箇所の選定・技術基準の策定・予算措置を担い、必要な工事を外部に発注します。一方、電気工事工業組合(中国地方電気工事業協同組合など)は、管内5県(広島・岡山・山口・鳥取・島根)の多数の電気工事会社を統括する団体であり、中国電力から発注される引込線工事や計器取付工事等を一括して受注し、組合員に振り分けて施工する役割を果たしています。この共同受注体制により、膨大な数の小規模工事を効率良く捌き、地域全域で均一な品質基準で施工できるようになっています。

加盟工事業者(地域の電気工事店)は、中国電力の**「引込線・計器工事技能認定」資格を取得した作業員を配置し、所定の基準に従って防護管挿入作業を実施します。施工後は組合が取りまとめて中国電力へ完了報告を行い、中国電力が施工結果の検査確認を行います。

3. 作業の流れ

低圧防護管挿入の作業手順について、調査段階から施工完了までの一般的な流れを標準手順に沿って示します。

  1. 現場調査 中国電力ネットワークから、工事票が渡され、その情報を下に施工業者が現地確認を行います。
  2. 関係者への連絡・調整: 工事実施に先立ち、関係機関や周辺住民への調整を行います。特に施工箇所が私有地の場合は、事前説明し、敷地立ち入りや枝処理の許可を得ます。
  3. 施工準備・資機材手配: 担当となった工事業者は必要な資機材を準備します。具体的には、適切な長さ・径の低圧防護管、固定バンド、はしごや高所作業車、絶縁工具類等です。
  4. 低圧防護管の挿入・取付施工: 現場準備が整い次第、作業員が電柱やはしごを使って問題の引込線に接近します。防護管は長尺の合成樹脂製筒状資材で、片側に縦割りの開口部があるかスリット構造になっており、既設の電線に後付け装着できるようになっています。作業員は樹木と接触している電線部分を清掃し、必要に応じて枝葉を一時避けてから、防護管を装着します。長さ2mの防護管を複数本継ぎ足す場合は、継目がずれないように継手バンドで固定します。防護管が強風等で移動しないようしっかりと締着します。カバー装着範囲は樹木接触部を完全に覆うよう調整し、未保護部分が枝に触れない状態にします。
  5. 完了点検: 防護管取付後、作業責任者が地上および高所から施工箇所の最終点検を行います。防護管に隙間や破損がないか、固定は確実か、カバー範囲は十分かを確認します。
  6. 作業報告・事後対応: 施工完了後、工事業者は所定の様式で工事完了報告書を作成し、施工前後の写真を添えて電気工事工業組合経由で中国電力に提出します。中国電力担当者は報告内容を確認し、必要に応じて現地確認を実施します。以降、その箇所は定期巡視などで継続監視され、防護管の摩耗や樹木の成長状況に応じて再対応が検討されます。

以上が標準的な作業フローです。計画段階から施工・報告まで所定の手続きを踏むことで、確実かつ安全な防護管挿入を実現しています。

4. 使用資材・仕様

低圧防護管として使用される資材は、主に架空配電線や引込線の機械的保護用に開発された耐候性・耐摩耗性に優れた合成樹脂チューブです。材質は耐久性の高いポリエチレン系樹脂が一般的で、屋外の紫外線や風雨に晒されても長期間性能を維持できる特性を持ちます。電気的には絶縁体であり、万一電線被覆が劣化して内部導体に触れるような場合でも、外側の防護管によって樹木や作業者への漏電を防ぐ二重構造の保護が確保されます。

防護管の構造上の特徴として、二層構造の耐摩耗設計が挙げられます。例えば、外層は黒色の厚手樹脂で高い耐摩耗強度を持ち、内層には鮮やかな黄色樹脂を用いて摩耗検知機能を付加した製品があります。このような製品では、長年の枝との擦れで外層がすり減ると下地の黄色が露出し、一目で交換時期と判断できるようになっています。これは保守点検の省力化にも寄与する工夫です。

寸法・規格については、電線の太さや用途に応じて複数のサイズ・型式が用意されています。弊社が使用している低圧用防護管は内径15mmと30mm(長さ各2,000mm)が多用されます。これらは一般的なサイズの引込線を覆うのに適したサイズになっています。架空引込線用の防護管はスリット入り構造で工具なしで開閉装着可能です。

上の写真は30Φのもの

上の写真は15Φのもの

上のは45Φのもの。かなりの太物に使用する。

中国電力で採用する資材は社内認定品であり、耐候試験・電気特性試験など厳格な基準を満たしたもののみ現場使用されています。

施工後の設備安全については、防護管設置により当該箇所の安全度が飛躍的に向上します。電線と樹木が直接触れても、防護管がクッションおよび絶縁の役割を果たすため、感電や短絡の危険が低減されます。これは、例えばその樹木に人が触れた場合でも電線から漏電して感電するリスクが防護管によって抑えられることを意味します。また、防護管自体も難燃素材の採用により、仮に電線がトラブルで発熱・スパークした場合でも延焼しにくくなっています。設置後は定期点検時に防護管の摩耗具合やずれがないかチェックし、先述の二層管であれば黄色層の露出が見られた段階で計画的に交換作業を行います。防護管は比較的軽量な樹脂製品であり電線の機械的荷重へ大きな影響を与えないため、線条のたるみや支持金具への過負荷の点でも影響は少ないです。

お客様に知っておいて欲しいこと

この一連の業務は、中国電力ネットワークが発注元です。低圧防護管を挿入する電線は、中国電力ネットワークが所有している部分になります。各需要家(家庭や工場など、電気を使う建物や場所)の引込線は、実は中国電力ネットワークの所有物という扱いです。ここで注意しておいてほしいことは、

  • 費用かからない完全に無料
  • 停電は必要ない
  • お客様所有の電線には防護管を入れられない。(この一連の業務では入れられないということです。お客様所有の引込線に防護管を入れたい場合、またはどこまでが自身の所有物なのか分からない場合は最寄りの電気工事店に調査または施工を依頼する形になります。)

という点です。そして最後に、怪しいと思ったら中国電力ネットワークに問い合わせて下さい。事前に訪問した際にお渡しするか、郵便受けにお入れするチラシに、業者の連絡先と中国電力ネットワークの連絡先が書かれています。こんなことを言うと自分の首を絞めてしまいそうですが、最近は詐欺まがいの訪問営業も多いので、しっかりと信用できるかどうかを判断して欲しいのです。また、近隣の方などが、自分のところもやって欲しいと言ってこられる場合もありますが、伝票がでてないところには施工できないのでご了承下さい。

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