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業務用:工場・店舗での電気対応電気と暮らしの豆知識

三相交流とは何か?――構造、仕組み、そして応用まで少しだけ解説

業務用:工場・店舗での電気対応

はじめに

私たちの暮らしや産業を支える「電気」は、非常に多くの分野で使われています。その中でも特に、工場や大型ビル、商業施設などで不可欠な電力供給方式が「三相交流(three-phase AC)」です。単相交流との違いや、回転磁界の仕組み、発電とモーターの関係など、その基礎から応用までを、専門的な視点からわかりやすく解説します。


三相交流とは?

三相交流とは、電力供給を3本の導体を使って行う方式で、それぞれの電線に120度の位相差を持った正弦波の交流電流が流れます。これは、1周360度の円を3等分した構造であり、時間的にずれた3つの電圧波形を意味します。

各相は通常「R相」「S相」「T相」と呼ばれ、各相の電圧は互いに120度ずつずれているため、常にどれかの相が最大電力を供給している状態を保つことができるのが特徴です。


単相交流との違い

項目単相交流三相交流
導体の本数2本(線と中性線)3本(R・S・T)
波形1つの正弦波位相差120度の3つの正弦波
電力供給の安定性途切れがある常に供給される
主な用途家庭用(100V・200V)工場・業務用(200V・400V)

三相交流が「効率的」とされる理由

1. 送電効率が高い

同じ断面積の電線を使って送れる電力は、単相よりも三相の方が約1.73倍大きくなります。これは、3つの波形が協調して働くため、ピークの重なりや無駄が少ないことに由来します。

2. モーター駆動が滑らか

三相交流は「回転磁界」を自然に発生させるため、三相モーターはトルク変動が小さく、効率よくスムーズに回転します。

3. バランスの取れた電力設計が可能

建物や設備で多くの機器が接続されていても、三相で適切に負荷分散を行えば、系統全体の安定性を高めることができます。


回転磁界の原理:三相交流がもたらす最大の恩恵

● 回転磁界とは?

回転磁界とは、時間とともに方向が変化し、空間的に回転する磁場のことです。三相交流を3つのコイルに流すことで、この回転する磁界が発生します。

● 発電機と回転磁界

発電機では、**回転子(磁石)**が回転することで、固定子にある3つのコイルを交互に通過し、各コイルに電圧を誘導します。このとき、コイルの配置が120度ずれているため、3つの波形も自然と120度の位相差を持ちます。

● モーターでの応用

三相交流を流したとき、固定子コイルに生じる磁界が時間差を持って回転します。これにより、回転子が追いかける形で回転を始めます。これは、「同期速度」で回転する回転磁界に追従する運動です。

● 同期速度 Ns(回転/分) = 120 × f ÷ p
(f:周波数(Hz)、p:極数)


三相モーターの種類と特徴

● 誘導電動機(インダクションモーター)

最も普及しているモーターで、回転磁界により回転子に電流が誘導され、磁界の追従回転をします。構造がシンプルで、故障が少ないため多くの工場設備に使用されています。

● 同期電動機

回転子に電磁石または永久磁石を使い、回転磁界と完全に同期して回転します。誘導モーターよりも効率が高く、精密機器に使われますが、始動に工夫が必要です。


三相交流の結線方式

● Y結線(スター結線)

中性点を取ることができる構造で、相電圧と線間電圧の関係(V線間 = √3 × V相)を活かして設計できます。

● Δ結線(デルタ結線)

三角形状に各相をつなぐ構造で、大きな電流を流すことができます。主にモーターなどの高出力機器に使われます。


実務での活用例

  • エレベーター・コンプレッサー・空調機器:高トルクで連続運転が必要な装置に最適。
  • 大規模厨房機器・冷凍装置:安定した電力が求められる現場で活躍。
  • ポンプ・ファン設備:建築設備や工場設備での標準仕様。

設計・施工上の注意点

  1. 回転方向の確認:三相モーターの接続順序を誤ると逆回転します。現場での確認が必須です。
  2. 不平衡負荷の回避:三相のうち1つだけに極端な負荷をかけると、配電網に悪影響を与えることがあります。
  3. 動力契約の確認:三相を使用するには、電力会社との動力契約(低圧電力など)が必要です。

三相交流の将来性と技術の進化

三相交流の原理自体は100年以上前に確立されましたが、その応用は進化を続けています。

  • 高効率インバーターによる三相モーターの省エネ制御
  • 再生可能エネルギーとの組み合わせ(三相太陽光インバーターなど)
  • IoTとの連携によるスマート制御

これらは、従来の設備に比べて、消費電力の見える化や保守性の向上を実現し、より持続可能なエネルギー社会の基盤となっています。


まとめ

三相交流は、その構造・仕組み・応用いずれにおいても、非常に合理的かつ効率的な電力供給方式です。とくに、発電機で自然に生成される三相の電流が、モーターに供給されることで「回転磁界」を生み出し、産業用の動力源として強力な基盤を提供しています。

電気工事、設備保守、設計業務に携わる方にとって、三相交流の理解は避けて通れない基礎知識です。この記事が、その理解を深め、実務に活かす一助となれば幸いです。

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