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【雑談回】それは本当に心霊現象なのか? 勝手に鳴る電話、点くテレビ、消える電気を技術者の視点で解き明かす

電気と暮らしの豆知識

◆ 不可解な現象に出会ったとき、私は恐怖よりも“探求心”を抱く

「電源も電話線もつながっていない電話が突然鳴った」
「テレビの電源を切ったのに、誰もいないはずの部屋で勝手に点いた」
「深夜、消していたはずの電気が突然点灯した」

こういった話は、心霊体験としてよく語られます。
けれど、電気工事という仕事に日々関わる私にとって、そういった話を耳にしたとき最初に湧くのは“恐怖”ではありません。
「なぜ、どうやって?」という純粋な探究心です。

心霊現象として語られるような出来事も、技術的な視点から見ると、仕組みや構造によって説明できる可能性が多分にある。
そして、もしそれが本当に技術的に説明できないものだとしたら——それはむしろ、現場の記録として残しておきたい“貴重な事象”になるのです。


◆ 電話が鳴る──電気が供給されていないのに?

昔の黒電話などを例に挙げると、あれが鳴るためには一般的に48V程度の直流電圧に加えて、70〜90Vの交流電流(20Hz前後)を受け取る必要があります。
この条件がなければ、ベルは通常作動しません。

では、完全に電源も電話線もつながっていない状態でベルが鳴ったという場合、何が起きたのか?

技術的に想定できる仮説:

  • 静電気の蓄積と突発的放電
     長期間放置された電子機器には、わずかな静電気が部品や配線に溜まっていることがあります。
     環境要因(湿気、温度変化)などでこれが一斉に放電すると、まれに回路が部分的に作動する可能性が考えられます。
  • 強い電磁波の影響
     雷、無線局、近隣の高出力送信設備などが発する電磁波が、古い電話機のアナログ回路に干渉して、呼び出し信号に似た電流を生み出すことも理論上ありえます。
  • 内蔵された電池の作動
     特定の機種や後年の改造モデルには、内部に小型の電池を内蔵しているものもあり、それが偶発的に作動して信号を出す可能性もあります。

とはいえ、これらはいずれも極めて稀な条件下でしか成立しない“例外的な現象”です。
だからこそ、「本当に起きたとすれば、その電話機を分解・分析したい」という気持ちにすらなるのです。


◆ テレビが点く──“見えない信号”と人間の記憶

テレビの自動起動に関する話も、心霊現象と誤解されやすいケースのひとつです。
現代のテレビには以下のような自動化・連携機能が搭載されているため、意図せず電源が入ることがあります。

ありがちな誤作動の要因:

  • HDMI連動(CEC機能)による自動起動
     ブルーレイプレイヤーやゲーム機の電源を入れると、それに連動してテレビも起動する設定がデフォルトになっていることが多く、ユーザーが知らないまま作動していることがあります。
  • 赤外線信号の反射や干渉
     太陽光や蛍光灯、別の赤外線機器から発せられた信号が偶然テレビの受光部に届くと、リモコン操作と誤認することがあります。
  • スマート家電としての自動スケジュールやソフトの不具合
     Wi-Fi接続されたテレビでは、アップデートやクラウド制御による予期せぬ動作もありえます。タイマーや「自動再起動」などが初期設定のまま動いているケースも多いです。

でも、もし「コンセントが完全に抜けていた」という前提で話が進めば、それはもはや電気的な原因とは考えにくくなります。
こうなると、以下の可能性が浮上します:

  • 記憶違いや確認ミス
     実は電源コードが半差しで導通していた、スイッチの入切を勘違いしていた、という可能性は意外と多いものです。
  • 幻覚・錯覚・記憶の誤作動
     人間の脳はときに事実を都合よく“再構築”します。特にストレス状態や寝不足のとき、現実の一部が歪んで認識されることは珍しくありません。
  • 超常現象……?
     そして、技術的にも心理的にも説明がつかない場合、人はそれを“心霊現象”と呼び始めます。でも私としては、それでもなお、まだ見つけられていない物理的な原因がどこかにあるのではないかと疑いたくなるのです。

◆ 照明が勝手に点いたり消えたりする現象について

照明の自動点灯・消灯もまた、「霊の仕業では?」と疑われやすい現象です。
しかし技術的に見れば、照明の動作は非常に繊細な仕組みに依存しているため、以下のような要因で誤作動が起こることがあります。

よくある原因とその詳細:

■ スイッチ部品の劣化や接触不良

古くなったスイッチや調光器は、接触が不安定になってオンオフを繰り返すことがあります。
特に軽い揺れや振動、気温差で接点が変化することもあり、「気づいたら電気が消えていた」「急に点いた」となるのです。

■ センサー付き照明の誤作動

人感センサーや明るさセンサー付きの照明は、反応の範囲や感度によって意図せず作動することも。
小さな虫、エアコンの気流、カーテンの揺れ、熱源などもセンサーを“誤認”させる原因になります。

■ ノイズ・サージ電流の影響

雷などによって一時的な過電圧(サージ)が発生すると、電子回路が誤作動することがあります。
電子式スイッチやスマート照明はこうした影響を受けやすく、勝手にオンオフされるように見えることも。

■ 電力系統の一時的な電圧変動

住宅の配線が古かったり、隣接する機器が高負荷をかけていたりすると、一時的に電圧が下がって照明が消えることがあります。
電圧が復帰したときに再点灯する様子は、まさに「勝手に点いた」ように見えるのです。


◆「心霊現象」とされる背景にもある、人間の思い込み

こうした現象を見て、「あれは霊の仕業だ」と結論づけてしまう人も少なくありません。
でも、そこには「見えないものは不安」という人間の心理が働いています。

また、夜や暗い場所で起きた現象はより強く記憶に残るため、印象が脚色されやすく、「あのとき確かにスイッチは触っていない」と思い込んでしまうことも多いのです。

◆ 技術者の視点で見る“心霊現象”

技術者としてこうした話を聞くとき、私が考えるのは「その現象はどう再現できるか?」ということです。
不可解なことが起きたとき、それを「ただの怪談」として流すのではなく、どんな仕組みで起こったのかを探る。
それはまさに、科学と工事の境界線に立つ者にとっての“ミステリー解明”です。

もしそれがどうしても説明できない現象であるなら、それは「まだ誰も見つけていない仕組みがあるかもしれない」——そんなロマンすら感じてしまいます。


◆ おわりに

勝手に鳴る電話、点くテレビ、消える電気。
それはただの怪奇現象ではなく、まだ誰も気づいていない仕組みの表れかもしれません。
怖がるのではなく、「どうしてだろう?」と一歩踏み込むことで、心霊現象が“科学の芽”に変わる。
そうした現象の一つひとつに向き合う姿勢を、私はこれからも大切にしていきたいと思っています。

「怖い話」を聞いても、私はまず“回路図”を思い浮かべてしまう。
そんな自分を、ちょっと面白がってもらえたら幸いです。

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