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令和8年から適用開始:石綿障害予防規則の改正で電気設備も事前調査が必要に

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1. 石綿規制の強化と電気設備業界への影響

石綿(アスベスト)は、かつて「奇跡の鉱物」とまで呼ばれ、断熱性や耐火性、電気絶縁性に優れることから、多くの建材や設備部品に使用されてきました。しかし、その繊維を吸い込むことで、数十年後に健康被害を引き起こすことが明らかとなり、国内外で大きな社会問題となっています。

こうした背景のもと、日本では「石綿障害予防規則」が制定され、建築物などの解体・改修工事において、事前に石綿の有無を調査し、適切な対応を取ることが義務付けられてきました。現在でもこの規則に基づき、一定の建物では工事前に専門の調査者による「事前調査」と「報告」が求められています。

そして今、この規則が再び見直され、令和8年(2026年)1月1日からは、従来の「建築物」だけでなく、「工作物」とされる設備についても、解体・改修時には同様の事前調査が必要となることが決定されました。これにより、変電設備や配電盤、送電線鉄塔といった電気設備も新たな対象となり、電気工事業界や設備管理に携わる方々にとっては、今後の業務に大きく関わる法改正となります。

本記事では、石綿障害の基本知識から、現行の規則内容、そして令和8年から追加される新たな対象範囲と、その実務への影響について分かりやすく解説します。法令遵守と安全な作業環境づくりのため、ぜひ最後までご一読ください。

2. 石綿障害とは?人体への影響と過去の被害事例

石綿(アスベスト)は天然の鉱物繊維で、熱に強く、摩耗しにくく、電気絶縁性にも優れていることから、かつては建材や電気設備、断熱材など幅広い用途に使用されてきました。その利用は高度経済成長期にピークを迎え、日本全国の建築物やインフラ設備に組み込まれています。

しかし、その細かな繊維を吸い込むことで、深刻な健康被害を引き起こすことが判明しました。代表的な疾病としては以下のようなものがあります。

  • 中皮腫:胸膜や腹膜などに発生する悪性腫瘍。石綿ばく露によって強く関連することが知られています。
  • 肺がん:喫煙との相乗効果により、発症リスクが大幅に増加します。
  • 石綿肺:繊維が肺に沈着し、慢性的な呼吸障害を引き起こす病気。
  • その他:喉頭がんや卵巣がん、びまん性胸膜肥厚なども、石綿ばく露との関連が報告されています。

これらの病気は、ばく露から数十年後に発症するという特徴があります。そのため、石綿の使用が規制された後も、新たな患者が発生し続けているのが現状です。

日本国内では過去に、石綿を扱う工場や建設現場で働いた人々を中心に、多数の被害者が報告されています。中には家族が衣服を通じて石綿繊維に触れ、二次ばく露で健康被害を受けた例もあります。このように、石綿障害は「直接扱った人」だけでなく、周囲の人々や生活環境にも影響を及ぼし得る点が大きな社会問題となりました。

こうした背景から、日本では2006年に石綿の使用が原則として禁止され、さらに石綿障害予防規則をはじめとする規制が強化されてきました。今回の法改正も、その流れの中で「潜在的な石綿リスクをより広くカバーする」ために行われるものです。

3. 現在の石綿障害予防規則と事前調査の内容

石綿障害予防規則(石綿則)は、労働者の健康を守るために制定された労働安全衛生法の下位規則の一つです。特に解体や改修工事における「石綿ばく露防止」を目的としており、現在は主に建築物を対象として規定されています。

現在の規則の主なポイント

  1. 事前調査の義務化
    建築物を解体・改修する際には、石綿が使用されているかを必ず調査しなければなりません。調査は「建築物石綿含有建材調査者」といった資格を持つ専門の調査者が行う必要があります。
  2. 調査結果の記録と説明
    元請事業者は、調査結果を文書で記録し、作業に従事する下請け業者や現場の労働者に対して事前に説明を行うことが義務付けられています。また、工事現場には調査結果を掲示する必要があります。
  3. 行政への報告
    令和4年4月以降、解体工事等の一定規模以上の工事については、調査結果を労働基準監督署や自治体に報告することが義務化されました。現在では「石綿事前調査結果報告システム」を用いた電子報告が一般的です。
  4. 作業環境の管理
    石綿が含まれていることが判明した場合には、作業エリアを隔離し、集じん・排気装置を使用するなど、ばく露防止のための措置を徹底する必要があります。

現行規則の実務的な課題

現行制度では、建築物の調査に関してはかなり浸透してきましたが、工期への影響や調査コスト、資格者の不足など、現場ではいまだに課題があります。特に規模の小さい工事では「石綿はないだろう」という思い込みによる調査漏れが指摘されることもあります。

また、報告システムは電子化が進んで便利になった一方で、元請事業者が協力会社の調査結果をまとめて報告しなければならないという点が、体制整備を必要とする理由のひとつです。

こうした現行制度に加え、令和8年(2026年)からは新たに「工作物」も事前調査の対象に含まれることになります。これは電気設備業界にとっても大きな転換点となるため、早めの対応が求められます。


4. 令和8年1月1日から追加される対象範囲とは

これまでの石綿障害予防規則における事前調査は、「建築物」に限られていました。しかし、令和8年(2026年)1月1日から施行される改正により、対象は「工作物」にまで広がります(令和8年(2026年)1月1日以降に着工する工事を対象とする)。これにより、従来は対象外とされていたさまざまな設備が調査義務の範囲に含まれることとなります。

新たに対象となる「工作物」とは

「工作物」とは、建築物以外で土地に定着して設けられた構造物や設備を指します。今回の改正により、以下のようなものが新たに対象に含まれます。

  • 変電設備:変電所や変圧器を含む施設。過去の絶縁材や遮熱材に石綿が使用されている可能性があります。
  • 配電設備:配電盤や配線設備。古い機器の絶縁材やパッキンなどに含有例があるとされています。
  • 送電設備:鉄塔や関連する付帯設備。表面の塗料や補修材に石綿が含まれている場合があります。
  • その他の工作物:炉設備、配管、貯蔵設備など、断熱や耐火目的で石綿が使われてきた構造物。

事前調査の実施要件

新たに対象となる工作物についても、**「工作物石綿事前調査者」**など、厚生労働大臣が定める資格を持った者による調査が必要となります。これは建築物と同様で、専門の知識と技能を有する者が調査を担うことが義務付けられています。

実務における影響

電気工事会社や設備管理会社にとって、この改正は大きな実務的影響を持ちます。例えば、変電所の改修工事や配電盤の更新工事など、これまで事前調査が不要だった工事でも、調査と報告が必須となります。
さらに、調査結果は元請事業者がとりまとめて労働基準監督署や自治体に報告する必要があるため、工期や工程管理に新たな調整が発生します。

この改正は「手間の増加」とも見えますが、裏を返せば、工事の安全性や社会的信頼性を高めるための重要な一歩でもあります。電気設備を扱う事業者にとっては、今のうちから資格者の確保や社内体制の整備を進めることが求められます。


5. 今後の対応:工事計画と安全管理体制の見直しを

令和8年からの規則改正により、電気工事会社や設備管理者には、従来以上に計画的かつ組織的な対応が求められるようになります。特に「工作物」の事前調査が義務化されることで、工事計画や安全管理体制の見直しは避けて通れません。ここでは、今から取り組むべきポイントを整理します。

1. 工事スケジュールの調整

事前調査には、現場でのサンプリングや分析に一定の時間が必要です。また、調査結果は元請が取りまとめ、電子報告システムを通じて労働基準監督署や自治体へ提出しなければなりません。大気汚染防止法の届出では「工事開始の14日前まで」と定められているケースもあり、調査から報告までの期間を工期に組み込むことが不可欠です。
突発的な修繕や緊急工事の場合でも、法的要件を満たす必要があるため、迅速に対応できる調査体制の確保が重要となります。

2. 資格者の確保と育成

工作物の事前調査は、「工作物石綿事前調査者」など有資格者によって実施しなければなりません。講習制度はすでに開始されており、今後は受講希望者が増えることで受講枠が不足する可能性も考えられます。電気工事会社としては、早めに人材を確保し、資格取得を進めておくことが安心につながります。

3. 報告体制と社内手順の整備

元請事業者が調査結果をとりまとめて報告することが求められるため、協力会社も含めた情報共有体制を整える必要があります。電子報告システムの運用には「GビズID」が必要になるため、ID取得や社内での運用ルール作りも進めておきましょう。
また、現場掲示や労働者への説明に用いる書類のフォーマットを標準化しておくと、作業効率が高まります。

4. 悪質業者への注意喚起

石綿規制が強化される中で、「調査や除去を安価で請け負う」と称して、ずさんな調査や不適切な処理を行う業者も存在します。こうした業者に依頼してしまうと、後に行政からの指導や是正命令を受けるリスクがあり、工事全体の信頼を失いかねません。信頼できる調査機関や専門業者との連携を重視することが大切です。

5. 社内教育と顧客への情報提供

社員に対しては、石綿のリスクや規則改正の内容を共有し、現場で適切に判断できるように教育を行う必要があります。また、発注者や顧客に対しても「令和8年以降はこのような調査が必要になります」と説明できるようにしておくと、理解を得やすく、トラブル防止にもつながります。

今回の法改正は一見「負担増」に映りますが、逆に言えば、法令遵守を徹底することで安全性と信頼性をアピールできる絶好の機会でもあります。長期的には、こうした取り組みが会社の評価や顧客からの選ばれる理由となっていくでしょう。


6. まとめ:安全と法令遵守のために、今から備えを

石綿(アスベスト)は過去に広く利用され、その影響は今なお私たちの生活環境に残っています。健康被害の深刻さから、国は段階的に規制を強化してきました。そして令和8年1月1日からは、建築物に加えて工作物の解体・改修工事でも事前調査が義務化され、変電設備や配電設備、送電設備といった電気設備も対象に含まれることとなります。

この改正は、電気工事会社や設備管理者にとって新たな負担を意味しますが、それ以上に安全の確保と信頼性の向上につながる重要な取り組みです。工期やコストへの影響を最小限にするためには、早めに資格者の育成や社内体制の整備を進め、元請・下請を含めた連携を確立することが求められます。

また、石綿規制の強化を「面倒な義務」ととらえるのではなく、「顧客への安心提供」や「会社のブランド価値を高める機会」として活用する姿勢が大切です。工事の安全性や法令遵守を徹底することで、結果的に顧客からの信頼を得やすくなり、長期的な事業の安定につながります。

法改正は避けられない現実ですが、その備えは今からでも始められます。自社の現場で想定される影響を洗い出し、段階的に対応策を進めることが、2026年を迎える上での大きな安心材料となるでしょう。

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