サーカディアン照明とは何か、どんな効果があるか
サーカディアン照明とは、人間の生体リズム(サーカディアンリズム)に合わせて光の色や明るさを変化させる照明システムです。
サーカディアン照明の効果としては、以下のようなものがあります。
- 生体リズムの調整:朝は青空のような高色温度の光で覚醒を促し、夜は低色温度の光でリラックスさせることで、睡眠の質を向上させます。
- 快適性や知的生産性の向上:昼間は自然光に近い白色光で活動的になり、オフィスや学校などでの作業効率や集中力を高めます。
- 省エネルギー:照度センサーなどを用いて、室内の明るさに応じて照明を自動調節することで、不要な電力消費を抑えます。
以上が、サーカディアン照明とその効果についての簡単な紹介です。サーカディアン照明は、LED照明の調光・調色機能を活用した次世代の照明システムとして、注目されています。
サーカディアン照明の仕組みや特徴
サーカディアン照明とは、人間の生体リズムに合わせて光の色や明るさを変化させる照明のことです。生体リズムとは、約24時間周期で変動する睡眠・覚醒やホルモン分泌などの生理機能のことで、サーカディアンリズムとも呼ばれます。サーカディアン照明は、自然光の周期を人工的に再現することで、生体リズムを整えて健康や快適さを向上させる効果が期待されています。
サーカディアン照明の仕組みは、主に以下の2つの要素からなります。
- 光の色(スペクトル):光の波長によって、人間の目には色として認識されます。光の色は、生体リズムに影響を与える光を感知するセンサー(メラノプシン)にも作用します。特に青色光はメラノプシンに強く刺激を与えるため、覚醒や活動性を高める効果があります。逆に赤色光はメラノプシンに弱く刺激を与えるため、リラックスや睡眠を促す効果があります。サーカディアン照明では、朝は青空のような青色光で目覚めさせ、夜は暮れかかった空のような赤色光で眠りに誘うように、光の色を変化させます。
- 光の明るさ(照度):光の強さによって、人間の目は明暗を感じます。光の明るさも生体リズムに影響を与えます。一般的に、明るい光はメラトニンという睡眠ホルモンの分泌を抑制し、暗い光はメラトニンの分泌を促進します。メラトニンは睡眠の質やリズムに重要な役割を果たします。サーカディアン照明では、朝は明るい光で生体リズムをリセットし、夜は暗い光でメラトニンの分泌を促すように、光の明るさを変化させます。
サーカディアン照明の特徴は、以下のような点が挙げられます。
- 睡眠障害や時差ぼけなどの改善:サーカディアン照明は、自然光に近い光で生体リズムを整えることで、睡眠障害や時差ぼけなどの原因となる生体リズムの乱れを改善する効果があります。睡眠障害や時差ぼけは、不眠や日中の眠気だけでなく、集中力や記憶力などの認知機能や精神状態にも悪影響を及ぼします。サーカディアン照明は、これらの問題を解決する手段として注目されています。
- 生産性や学習効果の向上:サーカディアン照明は、光の色や明るさによって覚醒や活動性を高めることで、生産性や学習効果を向上させる効果があります。特に青色光は集中力や記憶力を高めることが知られています。サーカディアン照明は、オフィスや学校などで働く人や学ぶ人にとって有益な環境を提供することができます。
- 快適さや満足度の向上:サーカディアン照明は、自然光に近い光で快適さや満足度を向上させる効果があります。自然光は人間が本能的に好む光であり、心身ともに安らぎや幸福感を感じさせます。サーカディアン照明は、自然光が十分に得られない場所でも自然光に近い光で空間演出することができます。
以上がサーカディアン照明の仕組みや特徴です。サーカディアン照明は、人間本来の生体リズムに沿ったあかりで健康や快適さを向上させる画期的な照明です。今後もその技術や応用範囲が広がっていくことが期待されます。
サーカディアン照明で快適で健康的なオフィス空間を
オフィスで働く人々にとって、照明は視作業の効率や快適性だけでなく、睡眠や生体リズムにも大きな影響を与える要素です。しかし、節電対策や室内環境の変化により、オフィスの照明が不十分になったり、光の色や強さが一定になったりすることで、人々の覚醒度やパフォーマンスが低下したり、生体リズムが乱れたりする可能性があります。
そこで、パナソニック株式会社 エコソリューションズ社は、九州大学大学院の安河内 朗教授と共同で、光による覚醒度や生体リズムへの影響に配慮した、調光・調色 照明制御手法を考案しました1。この手法では、LED照明の色温度や明るさなどを時間帯によって変化させることで、省エネしながら、「知的生産性」と「健全なサーカディアンリズム」の維持が可能です。
具体的には、朝は青空のような高色温度(20000K)の光で覚醒度を高め、日中は白色光(5000K)で活動的に、夜は低色温度(2700K)の光でリラックスしながら睡眠へと導きます。また、照度センサーが部屋の明るさを常に感知し、外光の不足分を補うように自動で調光します。専用リモコンでお好みの起床時間と就寝時間をセットするだけで、毎日自動で調光・調色します。
この照明制御手法による、「知的生産性」および「サーカディアンリズム」への影響を調べるための検証実験では、「従来照明(750 lx)」「節電照明(400 lx)」「調光・調色 照明」の3つの試験条件で実施しました。日中は脳波による覚醒度評価と選択反応課題によるパフォーマンステストを行い、夜間には深部体温とメラトニン分泌量を測定しました。
その結果、「節電照明」では日中の覚醒度とパフォーマンスが低下し、夜間の体温も十分低下しなかった一方、「調光・調色 照明」では日中の「従来照明」と同等の覚醒度、パフォーマンスが維持され、かつ夜間の体温の低下量とメラトニンの分泌量が最も多いことがわかりました。
これらの結果から、「節電照明」では「知的生産性」や「サーカディアンリズム」への影響が危惧されますが、「調光・調色 照明」では、「知的生産性」と「健全なサーカディアンリズム」の維持が可能であることが確認されました。
パナソニック株式会社 エコソリューションズ社は、「サーカディアンリズム」と呼ばれる約24時間周期の生体リズムと光の関係を照明制御に応用し、「知的生産性」と「健全なサーカディアンリズム」を両立する次世代オフィス照明を事業展開しています。
オーデリック株式会社もまた、福井大学と共同でサーカディアン照明を開発しています。オーデリック株式会社は、朝すっきり目覚めて夜ぐっすり眠る健康的な生活をサポートするあかりとして、「LC-FREE CIRCADIAN / サーカディアン 照明」というシーリングライトを商品化しています。
このシーリングライトは、朝は青空を意味するAZURE (アズール)色(20000K)で目覚め、日中は白色光(5000K)で活動的に。夜は低い色温度(2700K)でリラックスしながら眠りへと導きます。また、自然光の周期を自動で再現する機能や、部屋の明るさを感知して自動で調光する機能も備えています。
オーデリック株式会社は福井大学 明石行生教授と共同で行った実証実験において、「サーカディアン 照明」は従来型(2700K)と比較して睡眠時の活動量が低く、睡眠質が高くなり、主観評価でもその効果が確認されたことを発表しています。
調光・調色 照明制御手法について、九州大学と共同で検証実験を実施「知的生産性」と「健全なサーカディアンリズム(生体リズム)」の維持が可能であることを確認 | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan : パナソニック ニュースルーム ジャパン
LED照明 による次世代オフィス照明の事業展開 | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan : パナソニック ニュースルーム ジャパン
サーカディアン照明|オーデリック株式会社 (odelic.co.jp)
サーカディアン照明のおすすめ用途やラインナップ
サーカディアン照明のおすすめ用途は、外光が差し込みづらい空間や日中室内で過ごすことの多い家庭、テレワークやケアホーム施設などです。これらの場所では、自然光で補えない光を人工光でサポートすることで、健康的な生活環境を実現することができます。例えば、寝室では就寝前に電球色の間接照明を使って落ち着いた雰囲気を作り、起床後は昼光色の明るい光で目覚めをさわやかにすることがおすすめです。
サーカディアン照明のラインナップとしては、オーデリック株式会社のLC-FREE CIRCADIAN / サーカディアン照明や日亜化学工業株式会社のDynasolis™などがあります。これらの製品は、高演色・高効率を維持しつつ、メラノピック照度と色温度の調整を同時に行うことができるLED調色ソリューションです。専用のリモコンやセンサーで操作することで、自動的に最適な光環境を提供します。また、豊富なサイズやデザインの中からお好みのものを選ぶことができます。
サーカディアン照明の導入事例
サーカディアン照明の導入による感想としては、以下のようなものがあります
Lachic」では、利用者や職員から「朝起きやすくなった」「夜ぐっすり眠れるようになった」「昼間も元気に過ごせるようになった」といった声が寄せられています。
三菱地所株式会社本社ビルでは、「朝は爽やかな気分で仕事が始められる」「昼間は集中力が持続する」「夕方以降は落ち着いた雰囲気で仕事がしやすい」といった感想が聞かれています。
長森いきいき倶楽部「Lachic」は、高齢者向けの介護施設で、サーカディアン照明を居室や居間・食堂に導入しました。朝は青空のような光で目覚め、夜は暖かな光でリラックスすることで、生体リズムを整え、良質な睡眠へと誘う光環境を実現しています。
三菱地所株式会社本社ビルは、オフィス空間にサーカディアン照明を導入しました。時間帯ごとに最適な照度や色温度に変化する光で、快適性と生産性の向上を目指しています。また、高精度の画像センサを取り入れたことで、省エネ効果も高めています。