漏電遮断器は万能ではない。漏電遮断器が反応しないケース
漏電遮断器があるから安心…本当に?
漏電遮断器の役割は、「本来通ってはいけないところに電気が流れたときに電気を遮断する」というものですが、本来通ってはいけないところに電気が流れているのにも関わらず、漏電遮断器が動作しない場合もあります。
どういう場合にそのようなことが起こるのか、この記事では漏電遮断器の仕組みを改めて整理しつつ、実際に反応しなかったトラブル事例とその原因、対策について詳しく解説します。
漏電遮断器が反応しない主なケース
- 微小な漏電が感知されないレベル
一般的な家庭用漏電遮断器の感度は30mA(ミリアンペア)前後です。それ以下の微弱な漏電では、装置が反応しないことがあります。これが経年劣化などによって起こると、焦げや異臭、火災につながるリスクがあります。 - アース不良やアース未接続による検知不能
漏電遮断器は、電流がアース(地面)に漏れることで、回路内の電流バランスが崩れたことを検知します。したがって、アースが正しく設置されていない場合、漏電しても遮断器が感知できません。 - 線間で感電した場合(L-N間など)
人がライブ線(L)とニュートラル線(N)の両方に同時に触れて感電した場合、電流は回路内で完結しており、外部への“漏れ”が発生しません。そのため、漏電遮断器は「漏電」と判断できず、感電が起きていても作動しないという重大な盲点があります。 - 設置環境や構造によって遮断器を経由しない漏電
配線方法や機器構成によっては、漏電が遮断器を通らない経路で発生することがあります。特に古い建物や複雑な機器構成ではこのようなリスクが見落とされがちです。 - 漏電遮断器そのものの劣化や設置ミス
長年使用されてきた漏電遮断器は、内部部品の経年劣化やホコリなどによって作動しなくなることがあります。また、施工不良により誤った回路に接続されているケースもあります。
実際にあったトラブル例
事例1:溶接機の漏電で他回路に影響(遮断器未設置)
工場のある事務所では、分電盤の分岐回路が次々と遮断される現象が発生しました。調査の結果、設備の動力用溶接機で2Aの漏電が確認されました。問題箇所には漏電ブレーカーが設置されておらず、漏電の影響が他回路に波及し、結果として事務所側の遮断器が誤動作に近い形で落ちていたのです。適切に対応されたことで、感電や火災などの重大事故は未然に防がれました。
出典:NITE 技術情報
事例2:配線被覆の破損による漏電(遮断器作動せず)
九州電気保安協会の現地調査では、配線が金属金具に挟まれて被覆が破れ、漏電が発生していた事例が報告されています。漏電箇所が設置ミスや長期の振動による被覆劣化に起因しており、漏電遮断器の設置や動作チェックが行われていれば、事故を回避できた可能性が高いとされています。
出典:九州電気保安協会ブログ
安全を確保するための対策ポイント
- 漏電遮断器の設置漏れをチェック
特に溶接機など、漏電リスクの高い設備には、必ず個別の漏電遮断器を設置しましょう。 - 定期的な動作確認を習慣化
漏電遮断器にはテスト釦(テストボタン)が付いており、「月に1度は試験してください」と記載されています。しかし現実には、月に1度どころか、一度も試験をしたことがないという人も多いのではないでしょうか。筆者の周囲でも、実際にテストしている家庭や事業所はごくわずかです。
「あるだけで安心」ではなく、「ちゃんと作動するかどうか」こそが本質です。 - アース工事の正確な施工・点検
漏電検知においてアースは命綱とも言える重要な要素です。古い建物やDIY工事では、特に再確認を推奨します。 - 設備・構造ごとのリスク把握
配線被覆の劣化や雨水浸入などは、時間の経過とともに漏電リスクを高めます。定期的な目視点検や清掃を実施しましょう。 - 遮断器の寿命と更新時期を意識する
一般的に漏電遮断器の寿命は10年程度とされており、交換や点検の時期を見逃さないことも安全確保には欠かせません。
まとめ
漏電遮断器は、私たちの命や財産を守る重要な安全装置ですが、「万能」ではありません。その仕組みや限界を知り、適切に点検・運用することが何よりも大切です。
線間感電のように、感電していても遮断器が作動しないケースがあるということを理解しておくことで、安全対策の見直しにもつながります。
設置されているかどうかではなく、正しく作動する状態で維持されているか。この意識が、事故の未然防止に直結します。
今一度、分電盤の中の遮断器を「見る」「押す」ことから始めてみてはいかがでしょうか。


